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(序)脳を観る光トポグラフィとは |
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自然界にある植物の緑色や動物の血・肉の赤色は、生物のエネルギー代謝をになうクロロフィル(光合成)、ヘモグロビン(酸素の運搬)、チトクロム(細胞内酸素反応の触媒作用)によって彩られています。これらのたんぱく質や酵素は光を吸収して特有の色を示すものが多いのです。そこで、光をもちいて生体の色を定量的に計測する「分光学的計測法」で生体内のエネルギー代謝を理解しようとする手法が発展してきました。
私が所属する日立製作所は1995年に光をもちいて人の脳機能を安全に画像計測できる「光トポグラフィ法」を発表しました。これの概要は、近赤外分光法(脳内の血液量変化の計測)をもちいて、大脳皮質機能を脳表面に沿ってマッピングし、その活動に伴い血液量が変化するのを観測します。 |
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脳を理解する方法としては、光トポグラフィによる物理学的アプローチをはじめ、遺伝子や神経活動を専門とする生理学、行動実験を専門とする心理学・認知科学などの異分野の専門家が連携し情報科学としてその解明にあたっています。解明する脳の働きとしては、意識下の機能、心の定量、注意の機能、ストレスの定量、学習メカニズム、論理的思考、言語機能、並列処理メカニズム等があげられます。これら活動の理念は、「脳科学をコアとした人間科学とその知見に基づく社会貢献」です。 |
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では、なぜ脳科学が重要になってきたかということですが、日本が抱えている問題に超少子・高齢化問題があります。高齢者を取り巻く問題としては、加齢とともに増加する精神疾患があげられます。また、子ども達の問題としては、学習面や行動面で問題があるとされる児童生徒が増加、40人学級で2〜3人認められれるとされています。
また、米国の報告で、人が一生涯悩まされる病気のランキングは、[1]単極性うつ病、[2]アルコール症、[3]骨関節症、[4]認知(痴呆)症、[5]総合失調症、[6]双極性障害と並びます。脳に起因する障害が多くあることがわかります。このような社会環境から脳科学は今後ますます重要で有用なアプローチになっていくと思っています。 |
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「書育」について脳科学の視点で考える |
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●人は言語をどのようにして獲得するのか |
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脳科学の見地から「書育」「書字」について考えてみましょう。
その前提として、人は音にあふれる環境の中から、いかに言語だけを抽出できるのか、そして、どのようにして言語を学習するのかについて研究した成果を紹介します。 |
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新生児の言語認識を光トポグラフィ法で計測して、新生児に日本語で話(言語音)を聞かせた時と、その言語音を逆回しにした非言語音を聞かせたときの脳の働きを比較しました。その結果、新生児は言語音をきちんと聞き分けていることが判りました。つまり、人は「生まれたときから言語を知っている」ということが判明しました。 |
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それでは新生児が知っている言語は「遺伝によるものか」、「学習によるものか」という疑問に至ります。そこでこれを判断する上で私たちは母国語(日本語)と外国語(英語)の聞き取り能力の比較をしてみました。もし、言語が遺伝であれば国に関係なくすべからく新生児は言語音を認識できるはずだからです。 |
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その結果、新生児は母国語のみに反応したのでした。この結果から、私たちは「子宮内で言語を学習している」という結論を導き出しました。この研究はまだ道半ばでこれは仮説としての結論です。 |
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●脳の構造と機能 |
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次に脳の構造と機能について説明します。 |
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脳は三層構造になっていると私たちは理解しています。図は脳の進化を表したものです。 |
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| 脳幹・間脳 |
生命維持 |
(爬虫類脳) |
| 大脳辺縁系 |
生存維持 |
(旧哺乳類脳) |
| 大脳皮質 |
より良い生活 |
(新哺乳類脳) |
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原始の時代は「衣・食・住」を満たすことで満足を得ていましたが、これに「娯楽・芸術や利便性」といった情動のニーズが加わりました。そして現在、さらに脳は「自己実現・能力向上」といった知の成長を指向しはじめています。 |
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生存の時代→情動の時代→知の成長と脳各層のそれぞれのニーズを満足させることが、これからの「新しい価値」になっていくだろうと脳の科学の視点から予想しています。新しい価値は複雑なものですが、これを追究することがこれからの重要なポイントになっていくと思います。 |
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脳機能
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ニーズ
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脳幹
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生命の源
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生命の維持
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衣・食・住・医
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生存の時代
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辺緑系
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情動の源
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情動の満足
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娯楽・芸術・
安心産業
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利便性の時代
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大脳皮質
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知の源
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知の成長
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教育
(自己表現・
能力向上)
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知性の時代
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●「書育」について考える |
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約40年前に、「知的生産の技術」(岩波書店)という本が出版され人気を博しました。著者は京都大学人文科学研究所教授、国立民族学博物館館長を勤められた梅棹忠夫先生です。梅棹先生がこの本を書かれた頃は、タイプライターがあったのみでワードプロセッサも無論パソコンも実用化されていませんでした。梅棹さんは本の中で「タイプライター書きはらくだ、ということがある。手書きというのは、じつは手で書いているのではなく、全身で書いているのである。…だからタイプライターが良い」とおっしゃっています。
梅棹先生の指摘は脳科学の見地からも的を射た内容だと思います。 |
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